第4回メルロ゠ポンティ若手研究賞審査結果
受賞作(論文部門)
鳥居千朗「〈変化する人間〉と〈行ったり来たりの人間〉──『ヒューマニズムとテロル』のケストラー批判に見る「良き両義性」」
受賞理由
本論文は、『ヒューマニズムとテロル』におけるケストラー批判を手がかりに、「変化する人間」と「行ったり来たりの人間」という対概念を抽出し、それを「良き両義性」と「悪しき両義性」の区別の原型として位置づけ、「変化する人間」が、自他への説明責任の実践だということを結論として取り出そうとする論文です。とりわけ「変化する人間」を、自己・他者・真理の不一致を引き受けつつ訂正を重ねる実践として捉えています。
問題設定は明確で、議論の構成も簡潔で一貫しています。一次テクストの読解は堅実で、概念の対応関係を見通しよく提示しています。今後は文献の拡張とともに、この論点をサルトルとの決別の動機など、より広い哲学的議論へと結びつけることを期待したいと思います。